目次
- 採用難とは|いま何が起きているか
- 採用難の現状
- 採用難は中小企業ほど深刻になりやすい
- 採用難の原因を「市場要因」と「自社要因」に分ける
- 市場要因(自社では変えにくい)
- 自社要因(自社で変えられる)
- なぜ切り分けが大事なのか
- 自社要因を診断する|どこでつまずいているか
- 採用ファネルのどこで落ちているか
- 「応募が来ない」のか「採用に至らない」のか
- 自社の採用力チェックリスト
- 原因別の打ち手①|認知・応募が足りない
- チャネルを広げる(待ちから攻めへ)
- 求人と採用広報で「魅力」を伝える
- ターゲットを絞って訴求を最適化する
- 原因別の打ち手②|応募はあるが採用に至らない
- 選考のスピードと体験を改善する
- ミスマッチを減らして辞退・早期離職を防ぐ
- 内定者フォローで承諾率を上げる
- 知名度のハンデを覆す|中小・スタートアップの採用強化
- 知名度で勝てなくても、接点は自分から作れる
- 知名度のハンデを乗り越えた中小企業の例
- 限られた人手で「行動量」をどう出すか
- 安定して採用できる体制をつくる
- 施策の足し算でなく「続けられる体制」を
- 自社で採用力を上げきれないときの「外注」という選択肢
- よくある質問(FAQ)
- 採用難の一番の原因は何か?
- 知名度のない中小企業でも採用を強化できるか?
- 賃上げをしないと採用できないのか?
- 自社で採用力を上げられないときはどうすればよいか?
- まとめ
- 出典
「求人を出しても応募が来ない」「内定を出しても辞退される」——採用がうまくいかない原因は、ひとつではありません。少子化や売り手市場のように自社では変えられない要因もあれば、自社の採用力のように変えられる要因もあります。この記事では、採用難の原因を切り分け、自社のどこがボトルネックかを見極めたうえで、原因別に採用を強化する打ち手をお伝えします。
※ 本記事に登場する採用市場・調査の数値は2026年6月時点のもので、変動する場合があります。
採用難とは|いま何が起きているか
採用難とは、企業が必要な人材を計画どおりに採用できない状態を指します。採用難の背景には、働き手の減少と売り手市場の長期化があります。まずは、いま採用市場で何が起きているのかを知っておきましょう。
採用難の現状
採用環境は、求職者にとって有利な「売り手市場」が続いています。2026年3月の有効求人倍率は1.18倍、2025年度平均は1.20倍でした[1]。前年度の1.25倍からはやや低下したものの、依然として1倍を上回っており、求人数が求職者数を上回る状態に変わりはありません。
その背景にあるのが、働き手そのものの減少です。生産年齢人口(15〜64歳)は減少が続いており、2026年1月時点で約7,341万人と、前年同月から約20万人(▲0.28%)減りました[2]。採用の母数となる人口が縮んでいくなかで、企業同士が限られた人材を取り合う構図になっています。
採用の難しさは、調査結果にも表れています。東京商工会議所の調査では、2025年卒の採用環境を「厳しい」と感じた企業が96.4%にのぼりました[3]。採用計画の半数未満しか確保できなかった企業は40.3%を占め、計画以上を確保できた企業は13.4%にとどまっています。人手不足感も根強く、2024年の日本商工会議所の調査では、中小企業の63.0%が「人手不足」と回答しています[4]。
人手不足を背景に、待遇面の競争も強まっています。多くの企業が初任給や賃金の引き上げに動いており、給与だけで他社と勝負するのは中小企業にとって負担が大きくなっています。
採用難は中小企業ほど深刻になりやすい
同じ売り手市場でも、採用難の重さは企業の規模によって変わります。中小企業は、知名度や待遇の面で大企業に比べて不利になりやすく、求職者の候補に入りにくい傾向があります。求人を出しても応募が集まらず、応募が来ても他社と比較されて選ばれにくい——こうした構造的なハンデを抱えているのが、中小企業の採用難の実態です。
ただし、知名度や待遇は自社だけでは変えにくい一方、応募が集まらない原因のすべてが規模で決まるわけではありません。そこで次の章では、採用難の原因を「自社で変えられるもの」と「変えにくいもの」に切り分けます。
採用難の原因を「市場要因」と「自社要因」に分ける
採用難の原因は数多く挙げられますが、対策を考えるうえで大切なのは、原因を「自社では変えにくい市場要因」と「自社で変えられる自社要因」に切り分けることです。両者を混ぜたまま考えると、変えられないことに悩んで動けなくなりがちです。
市場要因(自社では変えにくい)
市場要因とは、採用市場全体に共通する構造的な条件です。少子高齢化による生産年齢人口の減少、売り手市場の継続、大手企業を含めた採用競争・賃上げ競争などが当てはまります。これらは一企業の努力で変えられるものではなく、採用の「前提条件」として受け止めるしかありません。
自社要因(自社で変えられる)
自社要因とは、採用のやり方や体制など、自社の取り組み次第で変えられる条件です。代表的なものを挙げると、次のとおりです。
- 求人内容や採用広報での魅力の伝え方が弱い
- 求人広告など特定のチャネルに偏り、ターゲットに届いていない
- 選考のスピードが遅い、候補者への対応が不十分
- 採用に割ける人手や行動量が足りていない
これらは、知名度や人口動態と違って、自社で手を入れられる領域です。採用を強化するうえで紙幅を割くべきなのは、こちらの自社要因です。
なぜ切り分けが大事なのか
採用がうまくいかないとき、「景気が悪いから」「うちは無名だから」と市場要因のせいにすると、打ち手が見えなくなります。市場要因はたしかに逆風ですが、同じ市場環境でも採用を伸ばしている中小企業はあります。両者を分けたうえで、変えられる自社要因のどこにボトルネックがあるのかを見極めることが、採用強化の出発点になります。
採用戦略全体の立て方については、記事『中小企業の採用戦略とは|限られた予算と人員で採用を成功させる進め方』もあわせてご覧ください。
自社要因を診断する|どこでつまずいているか
自社要因に手をつけると決めたら、次は「どこでつまずいているか」を具体的に見極めます。同じ「採用できない」でも、原因がどこにあるかで打ち手は変わるためです。
採用ファネルのどこで落ちているか
採用は、認知 → 応募 → 選考 → 内定 → 入社という流れで進みます。この流れのどこで人が大きく減っているかを見ると、ボトルネックの位置がわかります。
- 認知から応募が極端に少ない → 入口(母集団形成)の問題
- 応募はあるが選考で離脱が多い → 選考体験・スピードの問題
- 内定を出しても辞退される → 口説き・内定者フォローの問題
どの段階の数字が弱いかを把握すると、限られたリソースをどこに振り向けるべきかが見えてきます。母集団形成と歩留まりの考え方は、記事『母集団形成とは?方法・手順と、歩留まりを上げる改善ステップを解説』で詳しく解説しています。
「応募が来ない」のか「採用に至らない」のか
自社要因は、大きく2つに分けると見極めやすくなります。「そもそも応募が来ない(入口の問題)」のか、「応募はあるが採用に至らない(通過・口説きの問題)」のかです。
この2つは、打ち手がほぼ逆になります。応募が来ないのにスピード改善をしても効果は薄く、応募はあるのに母集団を増やしても離脱が続くだけです。まず自社がどちらのタイプかを見分けることが大切です。
自社の採用力チェックリスト
自社要因のどこが弱いかは、次の観点で確認できます。当てはまる項目が多いほど、その領域に改善の余地があります。
- 求人や採用広報で、自社で働く魅力を具体的に伝えられているか
- 求人広告以外のチャネル(ダイレクトリクルーティング、リファラルなど)を使えているか
- 応募や候補者への返信が、1営業日以内を目安にできているか
- 面接日程の調整がスムーズで、選考が長引いていないか
- 採用にかけられる人手と行動量が足りているか
次の章からは、「応募が足りない」場合と「採用に至らない」場合に分けて、原因別の打ち手をお伝えします。
原因別の打ち手①|認知・応募が足りない
応募そのものが集まらない場合は、候補者との接点を増やし、自社の魅力を届けることが打ち手になります。
チャネルを広げる(待ちから攻めへ)
求人広告だけに頼っていると、その媒体に登録し、自社の求人を見つけてくれた人にしか出会えません。応募を待つ「待ちの採用」に加えて、こちらから候補者にアプローチする「攻めの採用」を取り入れると、出会える母数が広がります。
代表的なのが、ダイレクトリクルーティング(企業から候補者に直接スカウトを送る手法)やリファラル採用(社員紹介)です。求人広告・ダイレクトリクルーティング・リファラルを組み合わせると、特定のチャネルへの偏りを減らせます。仕組みは記事『ダイレクトリクルーティングとは?仕組み・メリット・始め方をまとめて解説』で解説しています。
ただし、スカウトの送付や候補者の選定には手間がかかります。自社だけで十分な量を回しきれない場合は、スカウト代行のような外部の力を借りる選択肢もあります。
求人と採用広報で「魅力」を伝える
知名度がなくても、働く魅力や職場の実態を発信すれば、応募率は上げられます。給与や待遇といった条件面だけでなく、仕事のやりがい、職場の雰囲気、入社後に得られる経験などを、求人票や採用サイト、SNSで具体的に伝えることが効果的です。
候補者が入社後の働き方を具体的にイメージできると、応募のハードルが下がり、入社後のミスマッチも減らせます。知名度で劣る中小企業だからこそ、採用広報に力を入れる価値があります。
ターゲットを絞って訴求を最適化する
応募を増やそうとすると、つい間口を広げたくなりますが、広く浅く届けるより、自社に合う人に深く届けるほうが、結果として採用につながりやすくなります。
どんな人に来てほしいのかを具体的に描き、その人に響く言葉で求人を書くことが大切です。ターゲットがあいまいなまま発信すると、メッセージがぼやけて誰の心にも届きません。まず「どんな経験を持つ人に、入社後どの役割を任せたいか」を書き出し、その人が転職で重視する点(裁量・成長・働き方など)に合わせて、求人の訴求を絞り込みましょう。
原因別の打ち手②|応募はあるが採用に至らない
応募は来ているのに採用に結びつかない場合は、入口を広げるより、選考から内定までの過程を見直すことが打ち手になります。
選考のスピードと体験を改善する
候補者は複数の企業を並行して受けていることが多く、選考に時間がかかると、その間に他社へ流れてしまいます。書類選考の結果連絡や面接日程の調整は、できるだけ早く進めることが重要です。応募への返信は遅くとも1営業日以内を目安にすると、候補者の志望度を保ちやすくなります。
面接での体験も、候補者の意思決定に影響します。一方的に評価する場ではなく、候補者の疑問に丁寧に答え、自社の魅力を伝える場にすると、選考途中の離脱を減らせます。
ミスマッチを減らして辞退・早期離職を防ぐ
内定辞退や早期離職の多くは、採用の段階での期待値のずれから生まれます。求人の見せ方を良くしすぎると応募は増えますが、入社後に「思っていたのと違う」となれば、辞退や早期離職につながりかねません。
求める要件や仕事の実態を、選考の過程で正直にすり合わせておくことが大切です。良い面だけでなく、大変な面も率直に伝えることで、納得して入社する候補者が増え、定着にもつながります。
内定者フォローで承諾率を上げる
内定を出してから入社までの期間も、候補者は迷い続けています。内定後に連絡が途絶えると、不安から辞退に傾きやすくなります。定期的な連絡や面談、社員との交流の機会などを通じて、入社への不安を和らげることが、承諾率の向上につながります。
知名度のハンデを覆す|中小・スタートアップの採用強化
中小企業やスタートアップが大企業に勝ちにくい最大の理由は、知名度です。とはいえ、知名度のハンデは、やり方次第で十分に覆せます。
知名度で勝てなくても、接点は自分から作れる
応募を待つ採用では、自社を知っている人としか出会えないため、知名度がそのまま応募数の差になります。打ち手①で触れた直接アプローチ(ダイレクトリクルーティング)は、この知名度の差を埋める手段としても効果的です。企業から候補者にスカウトを送るため、自社を知らない層にも接点を作れるからです。
求人媒体に登録していない層や、地方の人材、特定のスキルを持つ専門人材など、待っているだけでは出会えない相手にも届けられる点が、知名度に頼らない採用の強みです。
知名度のハンデを乗り越えた中小企業の例
実際に、知名度のある大企業でなくても、工夫によって採用を伸ばした中小企業はあります。厚生労働省の事例集では、専任の採用担当者を配置し、求人媒体やSNSでの情報発信に取り組んだ卸小売業が、1年間で12名の採用に成功した例が紹介されています[5]。応募者が入社前から働くイメージを持てるようになり、ミスマッチが減って定着率も高まったとされています。
共通しているのは、知名度の不足を、認知を広げる発信と、ミスマッチを防ぐ丁寧な情報提供で補っている点です。規模が小さくても打てる手はあります。
限られた人手で「行動量」をどう出すか
攻めの採用は接点を作れる一方、スカウトの作成や候補者の選定に手間がかかり、十分な行動量を出しにくいという課題があります。少人数の採用体制では、ここがボトルネックになりがちです。
そこで有効なのが、AIと人で作業を分担する考え方です。候補者の抽出や下準備のように量が必要な工程はAIで効率化し、候補者ごとに合わせた文面づくりや見極めといった判断は人が担う——こうした分業にすると、少人数でも十分な行動量と一人ひとりに合わせた品質を両立しやすくなります。採用におけるAIの使い方は、記事『採用にAIをどう活用する?事例から見える「成果が出る使い方」と「出にくい使い方」』で解説しています。
安定して採用できる体制をつくる
採用難への対策は、一度きりの施策では続きません。打ち手を足し算するだけでなく、行動量を継続的に出せる体制をつくることが、採用力の安定につながります。
施策の足し算でなく「続けられる体制」を
新しい媒体を増やす、スカウトを始める、採用広報に取り組む——こうした施策は、始めること自体は難しくありません。難しいのは、それを続けることです。担当者が片手間で回していると、繁忙期に行動量が落ち、その間に採用の機会を逃してしまいます。
大切なのは、誰が・どの工程を・どれくらいの量こなすのかを決め、無理なく続けられる運用にすることです。採用業務の工程を見直して効率化する進め方は、記事『採用DXの進め方|工程の棚卸しから自動化・委託まで。工数を減らす実務手順』で解説しています。
自社で採用力を上げきれないときの「外注」という選択肢
採用力を自社だけで上げきれない場合は、外注も選択肢のひとつです。採用業務の全体または一部を外部に任せる採用代行(RPO)を使うと、不足している人手を補いながら、自社の担当者は要件定義や見極めといった重要な判断に集中できます。
スカウトの送付など特定の工程だけ任せたい場合はスカウト代行、採用業務を幅広く任せたい場合は採用代行(RPO)と、任せる範囲に応じて選べます。費用や業務範囲は、記事『採用代行(RPO)の費用相場・業務範囲と、選び方・失敗しない依頼設計』で確認できます。外注は万能ではありませんが、自社の弱い工程を補う手段として、打ち手の選択肢に入れておく価値があります。
よくある質問(FAQ)
採用難の一番の原因は何か?
ひとつに絞れるものではありません。少子化や売り手市場といった市場要因と、知名度・訴求・選考体験・行動量といった自社要因が重なって起きています。大切なのは、変えられない市場要因に悩むのではなく、自社で変えられる自社要因のどこにボトルネックがあるかを見極めることです。
知名度のない中小企業でも採用を強化できるか?
できます。応募を待つ採用では知名度がそのまま応募数の差になりますが、ダイレクトリクルーティングのように企業から直接アプローチする手法なら、知名度に頼らず候補者と接点を作れます。採用広報で働く魅力を具体的に発信することも、知名度のハンデを補う打ち手になります。
賃上げをしないと採用できないのか?
待遇は採用の重要な要素ですが、給与だけで勝負する必要はありません。中小企業が大企業と給与で張り合うのは負担が大きく、現実的でない場合もあります。仕事のやりがいや職場環境、柔軟な働き方など、給与以外の魅力を具体的に伝えることで、応募や承諾につなげている企業もあります。
自社で採用力を上げられないときはどうすればよいか?
採用業務の全体または一部を外部に任せる、採用代行(RPO)やスカウト代行といった選択肢があります。不足している人手や専門ノウハウを補いながら、自社の担当者は重要な判断に集中できます。詳しくは記事『採用代行(RPO)の費用相場・業務範囲と、選び方・失敗しない依頼設計』をご覧ください。
まとめ
採用難の原因は、自社では変えにくい市場要因と、自社で変えられる自社要因に分けられます。少子化や売り手市場といった逆風はたしかにありますが、同じ環境でも採用を伸ばしている中小企業はあります。
まず、自社の採用がどの段階でつまずいているのか(応募が来ないのか、応募はあるが採用に至らないのか)を見極めましょう。そのうえで、入口が弱ければチャネルを広げ採用広報で魅力を伝える、通過が弱ければ選考スピードと候補者体験を改善するというように、原因別に手を打っていきます。知名度がなくても、直接アプローチと、行動量を継続的に出せる体制があれば、採用力は強化できます。
採用がうまくいかずお悩みなら、リソースワーカーの「採用支援サービス」もお役立てください。ターゲット設計から候補者の抽出、スカウト・応募者対応まで、AIと採用のプロの分業で、知名度に頼らず行動量と品質を確保して採用力を強化します。支援企業の半数以上が、人事体制を整えている途中のスタートアップ・成長企業です。
出典
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)について」(有効求人倍率 2026年3月1.18倍・2025年度平均1.20倍)
- 総務省統計局「人口推計(2026年1月1日現在 確定値)」(15〜64歳人口 約7,341万人・前年同月比▲0.28%)
- 東京商工会議所「2025年新卒者の採用・選考活動動向に関する調査」(採用環境「厳しい」96.4%・充足率50%未満40.3%・計画以上13.4%)
- 日本商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査(2024年)」(中小企業の63.0%が人手不足)
- 厚生労働省「地域で活躍する中小企業の人材不足に悩む経営者へのヒント 成功事例集」(専任担当の配置と情報発信で1年間に12名採用した卸小売業の事例)
