目次
- エンジニア採用が難しいのは「市場の構造」と「自社の課題」の両方が原因
- 市場側の要因① 有効求人倍率が高くエンジニアの需給が逼迫している
- 市場側の要因② フリーランス・副業の普及で正社員転職以外の選択肢が広がっている
- 市場側の要因③ 働き方・報酬条件の水準が高まり大企業・IT専業企業の人気が上昇
- 自社側の要因① 採用担当者がエンジニアのスキルを見極められない
- 自社側の要因② 求める要件が曖昧または過剰で母集団が形成できない
- 自社側の要因③ 採用手法が自社のターゲット層に合っていない
- 自社側の要因④ 選考スピードが遅く内定承諾前に辞退される
- 自社のエンジニア採用がどこで詰まっているかを診断する
- 応募が集まらない場合に疑うべきポイント
- 応募はあるが書類・面接通過率が低い場合に疑うべきポイント
- 内定を出しても承諾されない場合に疑うべきポイント
- 採用できても早期離職が多い場合に疑うべきポイント
- 詰まりポイント別の打ち手の選び方
- 母集団形成に課題がある場合|要件再設計とダイレクトリクルーティングの活用
- 見極めに課題がある場合|技術面接の設計とエンジニア社員の巻き込み
- 条件・魅力付けに課題がある場合|採用広報と雇用条件の見直し
- 選考スピードに課題がある場合|選考フローの短縮と意思決定体制の整備
- 非IT企業・事業会社がエンジニア採用で直面しやすい固有の課題
- 給与水準がIT専業企業と競合できない
- 技術的な魅力を発信する手段がない
- 社内にエンジニア採用のノウハウが蓄積されない
- 社内だけでの改善に限界を感じたときの外部活用の選択肢
- まとめ:エンジニア採用の改善は「市場のせい」にせず自社の詰まりポイントの特定から始める
「求人を出してもエンジニアからの応募が来ない」「スカウトを送っても返信がない」「内定を出したが辞退された」——エンジニア採用の担当者が直面するこれらの問題は、市場の構造的な難しさと自社固有の課題が重なって生じています。
この記事では、エンジニア採用が難しい理由を市場側と自社側に分けて整理し、自社の詰まりポイントの診断方法、打ち手の選び方、外部活用の判断までを、実務で使える視点で解説します。
エンジニア採用が難しいのは「市場の構造」と「自社の課題」の両方が原因
エンジニア採用の難しさを「人材が少ないから仕方ない」で片付けてしまうと、改善は進みません。市場側の要因と自社側の要因を分けて把握することが、具体的な打ち手を見つける出発点になります。
市場側の要因① 有効求人倍率が高くエンジニアの需給が逼迫している
IT・ソフトウェア系の職種はここ数年、有効求人倍率が全職種平均を大幅に上回る水準で推移しています。経済産業省の2019年試算では、2030年にIT人材が最大79万人不足するとも指摘されており、需要に対して供給が追いつかない構造的な人材不足が続いています。
採用企業数の増加と採用対象の拡大(DX推進・内製化シフト)が重なり、エンジニアの奪い合いは以前と比べて激しさを増しています。求人広告を出して応募を待つだけでは、採用ターゲットにリーチできない状況が常態化しつつあります。
市場側の要因② フリーランス・副業の普及で正社員転職以外の選択肢が広がっている
働き方の多様化が進み、優秀なエンジニアの中に「正社員として転職するよりフリーランス・副業で柔軟に働くほうが良い」という選択をする層が増えています。限られた候補者層を多くの企業が奪い合う構図になっており、転職サイトへの掲載だけでは母集団形成がますます難しくなっています。
この変化は、転職顕在層へのリーチに特化した求人広告だけでは採用が成立しにくくなっていることを意味します。転職潜在層にアプローチできるダイレクトリクルーティングの重要性が高まっている背景には、この市場構造の変化があります。
市場側の要因③ 働き方・報酬条件の水準が高まり大企業・IT専業企業の人気が上昇
リモートワークの定着・高水準の報酬・充実した技術環境を求める動きが強まり、大手IT企業・メガベンチャー・外資系企業への人気も高まっています。これらの企業との採用競争に巻き込まれると、給与水準・技術環境・働き方の柔軟性の様々な面で劣後する状況に置かれやすくなります。
この競合構造を正面突破するのではなく、「競合と異なる訴求軸で勝負できるか」「競合が積極的にアプローチしていない層に絞れるか」という視点が、中小・非IT企業のエンジニア採用において重要な戦略的問いになります。
ここまでが市場側の構造的な難しさです。一方、採用が進まない原因の多くは、市場要因だけでなく自社側の体制・要件・手法の組み合わせにあります。次に自社側の要因を見ていきましょう。
自社側の要因① 採用担当者がエンジニアのスキルを見極められない
採用担当者がエンジニアの技術的なスキルや経験の深さを正確に判断できないと、書類選考の基準がブレる、面接での見極めが甘くなる、採用要件の定義が現場の実態と乖離する、といった問題が連鎖します。
「プログラミング言語の種類は把握しているが、実務レベルの深さの違いが判断できない」という採用担当者は多いです。この課題を解消するには、技術面接にエンジニア社員を巻き込む仕組みの整備と、採用担当者自身が最低限の技術知識を習得する取り組みの両方が必要になります。
自社側の要因② 求める要件が曖昧または過剰で母集団が形成できない
採用要件が「◯◯言語3年以上・AWSの実務経験・チームリード経験・英語力TOEIC730点以上」のように複数の高い条件を重ねると、要件を満たす候補者がほぼ存在しない水準になることがあります。反対に「エンジニア経験者であれば可」という曖昧な要件では、書類選考の基準がなく選考の質が担保できません。
要件設計の精度は、母集団の量と質の両方を左右します。具体的な再設計の方法は、後述の「打ち手」セクションで扱います。
自社側の要因③ 採用手法が自社のターゲット層に合っていない
転職サイトへの掲載だけに依存した採用体制では、転職潜在層や特定の技術スタックを持つ希少なエンジニアへのリーチが難しくなります。エンジニア採用では、技術系特化のダイレクトリクルーティング媒体(Findy・Forkwell・Green等)、GitHubやQiitaなどのエンジニアコミュニティへのアプローチ、技術ブログや登壇を通じた採用広報など、エンジニアの行動パターンに合った接点の作り方が成果を左右します。
「なぜ応募が来ないか」の前に「自社のターゲット層はどこにいるか」を確認し、そこにリーチできる手法を選んでいるかを見直すことが、採用手法の再設計の出発点になります。
自社側の要因④ 選考スピードが遅く内定承諾前に辞退される
エンジニアは複数の企業から同時にアプローチを受けていることが多く、選考の遅さが直接的な辞退理由になりやすいです。「書類選考の結果連絡に1週間かかる」「最終面接から内定通知まで2週間かかる」という状況では、スピードで勝る他社に先を越されるリスクが高まります。
選考フローを短縮し、面接官の稼働を事前に確保し、内定通知のタイミングを早める設計が、優秀なエンジニアの採用成功率を高める重要な要素になります。
自社のエンジニア採用がどこで詰まっているかを診断する
市場側・自社側の要因を理解したうえで、次に必要なのが「自社はどの要因が効いているのか」の切り分けです。採用がうまくいかない原因はフェーズによって異なるため、どこで詰まっているかを正確に診断することが、有効な打ち手を選ぶための前提条件になります。
応募が集まらない場合に疑うべきポイント
応募数が少ない、または応募がゼロに近い場合は、次の3点を疑うのが基本です。
- 採用手法のミスマッチ:自社ターゲット層が使っていない媒体・手法に依存していないか
- 求人票の訴求力の不足:技術環境・開発文化・プロダクトの魅力が伝わっていないか
- 採用ターゲットの設定が狭すぎる:必須条件が過剰になっていないか
使用媒体を変える、求人票を見直す、スカウト配信を開始する、などのアクションのうち、どこから着手するかは現状の採用手法と課題の診断によって優先順位が変わります。
応募はあるが書類・面接通過率が低い場合に疑うべきポイント
応募数は確保できているが選考通過率が低い場合は、次の3点を確認します。
- 書類選考の基準が採用要件と乖離していないか(見極めの精度の問題)
- 面接での評価が担当者ごとにブレていないか(評価基準の統一の問題)
- 採用ターゲットに合わない候補者の応募が多くなっていないか(母集団の質の問題)
エンジニア採用では技術面接の設計が選考精度を左右します。採用担当者だけでは技術的なスキルを正確に評価できないため、エンジニア社員が面接に参加できる仕組みを整えることが、この課題への最も直接的な解決策になります。
内定を出しても承諾されない場合に疑うべきポイント
内定承諾率が低い場合は、選考スピードが遅く他社に先を越されていないか、内定後のフォローが不足して不安が残ってしまっていないか、給与・技術環境・働き方などの条件面が競合と比較して劣後していないか、会社の魅力・ビジョン・開発組織の方向性が候補者に伝わっていないかを確認することが重要です。
内定辞退の理由を直接ヒアリングする仕組みがあれば、改善の方向性が見えやすくなります。辞退候補者への率直なフィードバックを求める機会は、採用改善の重要な情報源です。
採用できても早期離職が多い場合に疑うべきポイント
採用後の早期離職は、採用プロセスのどこかにミスマッチの原因があります。採用時に伝えた仕事内容・技術環境・組織文化と実態が乖離していないか(リアリティショック)、採用要件と実際の業務に必要なスキルがズレていないか(スキルミスマッチ)、入社後のオンボーディング・フォロー体制が整っていないか(定着支援の不足)を確認することが必要です。
採用プロセスで「良く見せすぎる」情報提供は、短期的には承諾率を上げますが、長期的には早期離職につながりやすくなります。RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー:実態を正直に伝えるアプローチ)の設計が、採用の質と定着率の向上につながります。
詰まりポイント別の打ち手の選び方
詰まりポイントが診断できたら、それに対応した打ち手を優先的に実行することが改善の近道です。ここからは、フェーズごとに有効な打ち手を整理します。
母集団形成に課題がある場合|要件再設計とダイレクトリクルーティングの活用
応募が集まらない課題には、まず採用要件の再設計から着手しましょう。要件を「絶対に必要な条件(Must)」と「あれば望ましい条件(Want)」に分け、Mustを最小限に絞り込むことで母集団を広げ、Wantで候補者の優先度付けを行う構造にします。Mustに専門スキルや経験年数を多く詰め込んでいる場合は、ポテンシャル採用に振り直すことも検討に値します。
そのうえで、転職潜在層にアプローチできるダイレクトリクルーティングを活用します。Findy・Forkwell・Green・LinkedInなどエンジニアが多く登録している媒体でスカウトを送ることで、求人広告への応募を待つだけでは出会えない候補者層にアプローチできます。
スカウト文面は「なぜあなたにアプローチしたか」「入社後にどんな技術課題に取り組めるか」「どんな開発文化・技術スタックか」を具体的に伝えることが、返信率を高めます。汎用テンプレートのスカウトへの反応率は低い傾向があるため、候補者のGitHubや技術ブログを読み込んだうえでパーソナライズした文面を作成することが、成果につながりやすくなります。
見極めに課題がある場合|技術面接の設計とエンジニア社員の巻き込み
技術的なスキルの見極めが採用担当者だけでは難しい場合は、エンジニア社員が技術面接を担当する仕組みを整えることが最優先の対策になります。技術面接の評価項目(言語の実務レベル・コードの設計思想・問題解決のアプローチ)を標準化し、評価シートとして整備することで、面接担当者ごとの評価ブレを抑えられます。
エンジニア社員を採用活動に巻き込む際は、「採用に参加することが自分たちの組織にどうプラスになるか」を伝え、現場への協力依頼の背景と意義を共有することが、スムーズな巻き込みにつながります。
条件・魅力付けに課題がある場合|採用広報と雇用条件の見直し
内定辞退率が高い、スカウト返信率が低い場合は、「自社の魅力が候補者に伝わっていない」という訴求の問題と、「雇用条件が競合と比べて劣後している」という条件の問題の両方から改善を検討する必要があります。
採用広報(技術ブログ・社員インタビュー記事・開発組織の紹介コンテンツ)は、候補者を「知らない」状態から「興味がある」状態に移行させるための有効な手段です。初期投資と継続的な更新が必要ですが、中長期的に採用力を底上げする資産として機能します。
雇用条件の見直しは、給与水準だけでなく、リモートワークの柔軟性・副業可否・技術研修制度・技術選定への裁量など「エンジニアが重視する条件」を具体的に整備・言語化することで、給与水準だけの競争から抜け出せる可能性が広がります。
選考スピードに課題がある場合|選考フローの短縮と意思決定体制の整備
選考フローを短縮するためには、面接回数を増やしすぎない(多すぎる面接は辞退リスクを高めます)、書類選考から結果連絡まで3営業日以内のルール化、最終面接から内定通知まで3〜5営業日以内の意思決定フローの設計が有効です。
意思決定者(役員・CTO)が選考に関与するタイミングと稼働を事前に確保することは、選考スピード改善に効きやすい打ち手の一つです。「役員の予定が合わない→最終面接が2週間後→辞退」というパターンは、事前の稼働確保とオンライン面接の活用で防ぎやすくなります。
非IT企業・事業会社がエンジニア採用で直面しやすい固有の課題
ここまでの内容は業種を問わず共通の論点ですが、DXや内製化シフトに伴ってエンジニアを採用しようとする非IT企業・事業会社は、IT専業企業とは異なる固有の課題を抱えがちです。あてはまる場合は、ここで扱う3点をあわせて検討しましょう。
給与水準がIT専業企業と競合できない
IT専業企業・メガベンチャーと給与水準で正面から競合しようとすると、事業会社の多くは不利な位置に置かれます。給与水準での競合が難しい場合は、「IT企業では担えない事業への近さ・顧客との距離感」「業界ドメイン知識を持ったうえでのエンジニアリングへの挑戦」「安定した事業基盤のもとで新しい技術基盤を作る機会」など、IT専業企業にはない訴求軸を明確にすることが重要です。
また「現在は給与水準がIT企業に劣るが、今後の人事制度改定でエンジニアの市場価値に合わせる方向性を持っている」という方針を候補者に誠実に伝えることが、長期的な採用ブランドの構築につながります。
技術的な魅力を発信する手段がない
技術ブログ・GitHubでの公開・技術カンファレンスへの登壇・勉強会の開催など、エンジニアが集まる場への参加と情報発信は、採用広報の中でも特にエンジニア採用に直結しやすい手段です。しかし非IT企業では「社内エンジニアが少ない」「技術発信の文化がない」という状況も多く、この手段を活用するハードルが高くなりがちです。
スモールスタートとして、既存エンジニア社員に技術記事の執筆を依頼する、社内の技術的な取り組みを採用サイトに掲載する、CTOや開発リーダーのXでの発信を始めるなど、できるところから技術的な情報発信を積み上げることが、採用ブランド構築の第一歩になります。
社内にエンジニア採用のノウハウが蓄積されない
非IT企業ではエンジニア採用の経験を持つ採用担当者が少なく、毎回手探りで採用に取り組んでいる企業も多いです。エンジニア採用のノウハウ(有効な媒体・スカウトの返信率が高い文面の型・技術面接の評価基準)が社内に蓄積されないため、採用の再現性が低い状態が続きやすくなります。
外部のエンジニア採用専門家・採用代行会社のノウハウを活用しながら、その知見を社内に引き込む仕組みを意識的に設計することが、ノウハウの空洞化を防ぐ対策になります。
社内だけでの改善に限界を感じたときの外部活用の選択肢
社内リソースと専門知識の限界を感じたときは、外部の専門家・サービスを活用することで採用改善のスピードを上げられます。
採用代行(RPO)を活用すると、媒体選定・求人票の訴求設計・スカウト運用・応募者対応・選考管理など、エンジニア採用に必要な複数の業務を専門知識を持つ外部に委ねられます。エンジニア採用に特化した実績を持つ採用代行会社は、技術職の採用市場への理解、有効な媒体の知見、スカウト文面の設計ノウハウ、技術系コミュニティへのアプローチ方法を持っています。汎用型の採用代行ではなく「エンジニア採用の支援実績が豊富な会社」を選ぶことが、費用対効果を高める重要な選定基準です。
スカウト運用の工数と品質が課題の場合は、スカウト代行への部分委託も有効です。Findy・Forkwell・LinkedIn等のエンジニア向け媒体での運用実績を持つ事業者であれば、技術系候補者に刺さる文面設計と返信率改善のノウハウを蓄積しています。
外部活用で重要なのは、委託する範囲と自社が担う判断領域を明確に切り分けることです。実行工数が大きく定型化しやすい業務(スカウトの送信・返信対応・日程調整・媒体運用・書類管理)は外部に切り出し、採用担当者は採用ターゲットの定義・技術面接への関与・候補者との関係構築・最終合否の判断というコア業務に集中しましょう。「実行を任せる」と「判断まで委ねる」の区別を明確に持つことが、外部活用を成功させるうえで最も重要な原則になります。
まとめ:エンジニア採用の改善は「市場のせい」にせず自社の詰まりポイントの特定から始める
エンジニア採用の難しさには市場の構造的な要因がありますが、「市場が厳しいから仕方ない」という認識で止まると改善は進みません。応募が集まらない、選考通過率が低い、内定承諾されない、早期離職が多い——それぞれのフェーズに対応した固有の原因と打ち手があります。
まず自社の採用がどのフェーズで詰まっているかを診断し、その詰まりポイントに対応した手法の改善・社内体制の整備・外部リソースの活用を組み合わせることで、エンジニア採用の改善は確実に進みます。一つずつ、手を打っていきましょう。
エンジニア採用を強化したいとお考えなら、リソースワーカーの「採用支援サービス」もご検討ください。採用戦略の立案からペルソナ設計、求人票作成、スカウト送信、候補者対応まで、貴社に必要なサポートをご提供します。 「やるべきことは分かっているが手が回らない」「そもそも何をすれば良いか分からない」という方は、ぜひお役立てください。
